わたしはうみをだきしめていたい
私は海をだきしめていたい

冒頭文

一 私はいつも神様の国へ行こうとしながら地獄の門を潜ってしまう人間だ。ともかく私は始めから地獄の門をめざして出掛ける時でも、神様の国へ行こうということを忘れたことのない甘ったるい人間だった。私は結局地獄というものに戦慄(せんりつ)したためしはなく、馬鹿のようにたわいもなく落付いていられるくせに、神様の国を忘れることが出来ないという人間だ。私は必ず、今に何かにひどい目にヤッツケられて、叩(たた)き

文字遣い

新字新仮名

初出

「文芸 第四巻第一号」1947(昭和22)年1月1日

底本

  • 風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2008(平成20)年11月14日