ツンドラへのたび
ツンドラへの旅

冒頭文

十月の初め、急に樺太(からふと)サハリンへ行くことになった。 目的は、樺太の北、敷香(しすか)ポロナイスクの町近いあるツンドラ地帯で、冬期間の凍上(とうじょう)を防止したいという問題が起って、その予備調査をしようというのであった。一行は某省のA技師と、私と、私の方で凍上の実験を主としてやっているS君との三人であった。 十月の宗谷(そうや)海峡は、もう海の色も冷(つめた)く、浪(なみ)がざわ

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論」1942(昭和17)年1月

底本

  • 中谷宇吉郎紀行集 アラスカの氷河
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2002(平成14)年12月13日