しろいつきのせかい
白い月の世界

冒頭文

黒い月と白い月 ハワイ島の高峰マウナ・ロアは、一万三千七百フィートの山頂を中心にして、神奈川県よりも一周り広い全地域が、黒い熔岩で蔽(おお)われている。木も草も、昆虫も鳥も、生命のあるものは、なに一つこの土地では生きて行かれない。この黒い月の世界のことは、前に書いた。 ところが、ちょうどこれと対照する白い月の世界も、この地球上にある。それはグリーンランドの氷冠(アイス・キャップ)の上の景観で

文字遣い

新字新仮名

初出

「文藝春秋」1957(昭和32)年11月

底本

  • 中谷宇吉郎紀行集 アラスカの氷河
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2002(平成14)年12月13日