それから
それから

冒頭文

一 誰か慌(あわ)ただしく門前を馳(か)けて行く足音がした時、代助(だいすけ)の頭の中には、大きな俎下駄(まないたげた)が空(くう)から、ぶら下っていた。けれども、その俎下駄は、足音の遠退(とおの)くに従って、すうと頭から抜け出して消えてしまった。そうして眼が覚めた。 枕元(まくらもと)を見ると、八重の椿(つばき)が一輪畳の上に落ちている。代助は昨夕(ゆうべ)床の中で慥(たし)

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京朝日新聞」、「大阪朝日新聞」1909(明治42)年6月27日〜10月4日

底本

  • それから
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1948(昭和23)年11月30日、2010(平成22)年8月25日136刷改版