じっけんしつのきおく
実験室の記憶

冒頭文

実験室の記憶(きおく)というのは、追憶という意味ではなく、犬などの記憶というのと同じ意味で、実験室が記憶力をもっているという話なのである。 実験室が記憶力をもつなどというと、いかにも突飛(とっぴ)な話のようである。しかし、実際に実験室の生活をした人には、その意味がわかるはずである。 一つの教室に属するいくつかの実験室には、指導者の風格などという高尚(こうしょう)な話は別として、卑近(ひきん

文字遣い

新字新仮名

初出

「図解科学」朝日新聞社、1942(昭和17)年11月

底本

  • 機械のある世界〈ちくま文学の森11〉
  • 筑摩書房
  • 1988(昭和63)年11月29日