とくしゅぶらくとじいん
特殊部落と寺院

冒頭文

部落民は一般に仏法に対して最も熱烈なる信仰を有している。彼らが寺院に参詣して仏を拝し法を聴くの状態を見るに、一心に浄土を欣求するの至情が躍如たるものがある。彼らには日常の生活に苦しむ身でも、御本山への志納金はあえて怠らない。旅費がなくなって空腹を忍びつつ、遠路を徒歩して、遂に行き倒れにまでなりかけた婆さんが、懐中なる阿弥陀様のお金には手をつけなかったという話もある。けだし彼らはもと屠殺を業とし、皮

文字遣い

新字新仮名

初出

「民族と歴史 第二巻第一号 特殊部落研究」1919(大正8)年7月

底本

  • 被差別部落とは何か
  • 河出書房新社
  • 2008(平成20)年2月29日