ツーンこのほとり |
| ツーン湖のほとり |
冒頭文
もう十年も前のことであるが、倫敦(ロンドン)に留学中私はユニバシティカレッヂのポーター老先生の所へ繁げ〳〵出入りしてゐるうちに、一緒に瑞西(スイス)へ行かうとさそはれたことがあつた。そして二週間許(ばか)り、ポーター先生や引退した英国の老法律家夫妻と、ツーン湖畔のオーベルホッフェンといふ小村で暮したことがあつた。 ツーン湖のほとり、瑞西の夏は美しかつた。ホテルは小高い丘陵の上にあつて、ツーン湖
文字遣い
新字旧仮名
初出
「図書 第三年第三十二号」1938(昭和13)年8月5日
底本
- 日本の名随筆67 宿
- 作品社
- 1988(昭和63)年5月25日