おもしろみ
面白味

冒頭文

昔、伊東(いとう)で病気を養っていた頃、東京の一流料理店の主人が、遊びに来たことがある。料理店を通じての友人ではなく、同郷の男である。 私にはよく分からなかったが、何でも非常な食通で、料理の腕も一流だという噂(うわさ)の男であった。それで女房が、伊東の材料で、何か料理を教えてもらいたいと頼んだ。 それで材料を買いに出たわけであるが、驚いたことには、この先生、道路の真ん中を悠然と

文字遣い

新字新仮名

初出

「西日本新聞」1955(昭和30)年8月15日

底本

  • 中谷宇吉郎随筆集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1988(昭和63)年9月16日