てらだせんせいとぎんざ
寺田先生と銀座

冒頭文

寺田寅彦(てらだとらひこ)先生の連句の中に 春の夜や不二家(ふじや)を出(い)でて千疋屋(せんびきや) という句がある。 「銀座アルプス」や「珈琲(コーヒー)哲学序説」などでよく分るように、先生は銀座へよく出かけられた。 先生は、毎日のように、十一時半頃になると、実験室へ顔を出され、「ちょっと失敬」といって、銀座へ出かけられた。そして凮月(ふうげつ)か不二家で、ゆっくり昼飯を食

文字遣い

新字新仮名

初出

「銀座百店」1955(昭和30)年2月1日

底本

  • 中谷宇吉郎随筆集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1988(昭和63)年9月16日