ちゃわんのきょくせん ――さどうしょうじんのあるゆうじんに――
茶碗の曲線 ――茶道精進の或る友人に――

冒頭文

もう二十年以上も昔の話であるが、考古学を専攻していた私の弟が、東大の人類学教室で、土器の研究をしていたことがある。 その頃は、まだ今日のように、土器の型式による分類などは、ほとんど出来ていなかった。弟はその分類の仕事にとりかかって、何か科学的な分類法がないかと、いろいろ考えていた。 土器の形は、個々の標本では、もちろんそれぞれ著しく異(ことな)るが、特定の地域から出る或る時代と

文字遣い

新字新仮名

初出

「淡交」1951(昭和26)年4月1日

底本

  • 中谷宇吉郎随筆集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1988(昭和63)年9月16日