ぼっちゃん
坊っちやん

冒頭文

一 親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりして居る。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間程腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出して居たら、同級生の一人が冗談に、いくら威張つても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。小使に負ぶさつて帰つて来た時、おやぢが大きな眼をして二階位から飛び降りて腰

文字遣い

新字旧仮名

初出

「ホトトギス 第九巻第七号」ほとゝぎす発行所、1906(明治39)年4月1日

底本

  • 漱石全集 第二巻
  • 岩波書店
  • 1994(平成6)年1月10日