らんがくことはじめさいはんのじょ |
| 蘭学事始再版之序 |
冒頭文
蘭学事始の原稿は素(もと)より杉田家に存して一本を秘蔵せしに、安政二年、江戸大地震の火災に焼失して、医友又門下生の中にも曾(かつ)て之(これ)を謄写(とうしゃ)せし者なく、千載の遺憾(いかん)として唯(ただ)不幸を嘆ずるのみなりしが、旧幕府の末年に神田孝平(たかひら)氏が府下本郷通を散歩の折節(おりふし)、偶(たまた)ま聖堂裏の露店に最と古びたる写本のあるを認め、手に取りて見れば紛(まぎ)れもなき
文字遣い
新字新仮名
初出
「蘭學事始」林茂香、1890(明治23)年4月8日
底本
- 福澤諭吉著作集 第5巻 学問之独立 慶應義塾之記
- 慶應義塾大学出版会
- 2002(平成14)年11月15日