こしゃいんのひとこといまなおせいしん
故社員の一言今尚精神

冒頭文

明治元年正月、伏見の変乱、前将軍慶喜公は軍艦に乗て東帰、次(つい)で諸方の官軍は問罪として東海東山の諸道より江戸に入り、関東の物論沸くが如(ごと)く、怒て官兵に抗せんとする者あり、恐れて四方に遁逃(とんとう)する者あり。江戸広しと雖(いえ)ども、市に売る者なし、家に織る者なし。学者書生の如きもその行く所を知らず、大都会中復(ま)た一所の学校を見ず、一名の学士に逢わず。独(ひと)り我慶應義塾の社中は

文字遣い

新字新仮名

初出

「時事新報」1882(明治15)年3月27日

底本

  • 福澤諭吉著作集 第5巻 学問之独立 慶應義塾之記
  • 慶應義塾大学出版会
  • 2002(平成14)年11月15日