カンナとオンナ
カンナとオンナ

冒頭文

ひぐらしの鳴き声が涼しい。 わたしは、わたしのテーブルの前に坐(すわ)って料理をし、客はわたしのテーブルの前に坐っていた。 わたしは、料理をいつも自分で作りつつ食べ、客にもすすめる。 客は詩人であった。 どんな詩をつくるのかわたしは知らぬ。その詩人も、見せたことはないし、わたしも、見せてくれといったことはない。詩人だか、死人だか、わたしは知らぬ。ともかくも、

文字遣い

新字新仮名

初出

「独歩」1953(昭和28)年

底本

  • 魯山人の美食手帖
  • グルメ文庫、角川春樹事務所
  • 2008(平成20)年4月18日