インチキあゆ
インチキ鮎

冒頭文

前に村井弦斎のわた抜きあゆの愚を述べたが、あゆは名が立派だけにずいぶんいかがわしいものを食わせるところがある。そうしたインチキあゆのことを、少し述べよう。 東京ではむかし生きたあゆは食えなかった。生きたあゆどころか、はらわたを抜き取ったあゆしか食えなかったので、解釈によっては、昔の東京人はインチキあゆばかり食っていたのだといえないこともない。 そこへいくと、京都は地形的に恵まれ

文字遣い

新字新仮名

初出

「星岡」1935(昭和10)年

底本

  • 魯山人の美食手帖
  • グルメ文庫、角川春樹事務所
  • 2008(平成20)年4月18日