わかあゆのしおやき
若鮎の塩焼き

冒頭文

新緑の味覚は、若あゆの塩焼きからといってもよい。関西方面ではともかく、東京で活(いき)あゆの料理が自由に食べられるようになったのは、そう古いことではない。 しかも、ほんとうに天然の若あゆを使っているうちが東京広しといえども、果たして幾軒あるであろうか。あゆはまだまだ喧伝(けんでん)させてよいであろう。 今のあゆは江州のもので六月になると丹波のあゆが出る。江州は野洲川(やすがわ)

文字遣い

新字新仮名

初出

「星岡」1935(昭和10)年

底本

  • 魯山人の美食手帖
  • グルメ文庫、角川春樹事務所
  • 2008(平成20)年4月18日