りょうりのだいいっぽ
料理の第一歩

冒頭文

一人の男がいた。女房が去った後は独りで暮らしていた。その男はこんなことを考えた。 「まず土地を見つけることだ。よく肥えた土地を。そしてそこへ野菜を植えるのだ。毎日野菜が食べられるぞ」 けれど、男は土地を探すことをしなかった。家の中でごろごろしていた。それでも、おなかがすいてくるので、パンをかじった。男はあくる日、こんなことを考えた。 「野菜もいいが、牛を飼うのだな。そして、豚も飼

文字遣い

新字新仮名

初出

「独歩」1953(昭和28)年

底本

  • 魯山人の美食手帖
  • グルメ文庫、角川春樹事務所
  • 2008(平成20)年4月18日