よさむにひをかこんでなつかしいぞうすい
夜寒に火を囲んで懐しい雑炊

冒頭文

元来、美味な料理ができないという理由は、料理する人が鋭敏な味覚の舌をもたないことと、今一つは風情(ふぜい)というものの力が、どんなにうまく料理を工夫させるかを知らないからに基因する。この風情とは、美的趣味と風流とが主になって働きかけ、まず見る眼(め)を喜ばせ、次に食べる心を楽しませるのである。 しかし、料理という仕事も至芸(しげい)の境にまで進み得ると、まことに僅少(きんしょう)な材料費

文字遣い

新字新仮名

初出

「朝日新聞」1939(昭和14)年

底本

  • 魯山人の食卓
  • グルメ文庫、角川春樹事務所
  • 2004(平成16)年10月18日