まぐろをくうはなし
鮪を食う話

冒頭文

東京ほどまぐろを食うところはあるまい。夏場、東京魚河岸(うおがし)で扱うまぐろは一日約一千尾という。秋よりこれからの冬に約三百尾を売りさばくというのであるから、東京のまぐろ好きが想像されようというもの。夏場の千尾は、つまり夏漁が多いのであって、冬の三百尾は冬の漁獲がそれだけなのである。冬は夏の三分の一より漁獲がないのである。そうして、これらの産地は全部を北海道といってよい。 去年の夏のこ

文字遣い

新字新仮名

初出

「星岡」1930(昭和5)年

底本

  • 魯山人の食卓
  • グルメ文庫、角川春樹事務所
  • 2004(平成16)年10月18日