ふぐくわぬひじょうしき
河豚食わぬ非常識

冒頭文

ふぐを恐ろしがって食わぬ者は、「ふぐは食いたし命は惜しし」の古諺(こげん)に引っかかって味覚上とんだ損失をしている。その論拠の価値をきわめもせずに、うかうか古諺に釣り込まれ惜しくも無知的判断から、いやいや常識的判断から震え上がりその実、常識を失っている。 これらにむかってわれわれが冬季常食する天下唯一の美味、摩訶(まか)不思議の絶味であるふぐの料理が、いささかの危険性なき事実を諄々(じゅ

文字遣い

新字新仮名

初出

「星岡」1935(昭和10)年

底本

  • 魯山人の美食手帖
  • グルメ文庫、角川春樹事務所
  • 2008(平成20)年4月18日