びみほうだん |
美味放談 |
冒頭文
上京の頃 僕が初めて東京に出て来た年少時に、京橋のビアホールになにか祝いごとがあってね。ビールが半額なんだ。飲んでやろうと思って行ったが、まず洋食を食おうと思ってね。ところがその時は洋食のことはなにも分らん。ビフテキといっても、それが野菜だか肉だか飲物だか分らん。どうしようかと思って、そこで考えたね。隣のテーブルで命じたものの名前を覚えておいて、その品物が来るのを一生懸命我慢して待っておった
文字遣い
新字新仮名
初出
「星岡」1935(昭和10)年
底本
- 魯山人の美食手帖
- グルメ文庫、角川春樹事務所
- 2008(平成20)年4月18日