じんじょういちよう
尋常一様

冒頭文

ある日、友人の紹介で人が来た。客は、わたしをつかまえてさっそく質問を発した。 「先生、料理の根本義についておきかせください」 そこで、わたしは言下に答えた。 「食うために作ることだ」 客は物足りぬ顔をしながらまたきいた。 「食うために作ることですか、先生。そんなら、なんのために食うのですか」 「そりゃ生きるためにだ」 「なんのために生きるのですか」 「死ぬために

文字遣い

新字新仮名

初出

「独歩」1953(昭和28)年

底本

  • 魯山人の美食手帖
  • グルメ文庫、角川春樹事務所
  • 2008(平成20)年4月18日