げんさいのあゆ |
弦斎の鮎 |
冒頭文
毎年のことながら、春から夏、秋と昔からいう年魚(ねんぎょ)の季節となる。 わたしの舌は、あゆを世間で騒ぐほどうまいものだとは思っていないが、なんとなし高貴な魅力があってうれしいものだ。川魚のうちではあゆが有数の美味であること、それに優美な姿であることにもちろん異存はない。なんといっても四月から当分の間、あゆが王座を占める一つの理由は、この季節には、これに匹敵するような気の利いたうまい魚が
文字遣い
新字新仮名
初出
「星岡」1935(昭和10)年
底本
- 魯山人の美食手帖
- グルメ文庫、角川春樹事務所
- 2008(平成20)年4月18日