あゆのめいしょ
鮎の名所

冒頭文

あゆをうまく食うには、あゆの成長と鮮度が大いに関係する。京阪や東京でいうと、七月がよい。地方によっては、早い遅いがある。子を持つ前の最大なのがよい。子を持ってからは二番目といってよい。見た目に見事なのを喜ぶ者もあるが、これは素人の話、東京でも盛んにあゆを賞味するので、河岸(かし)には日本全国からイヤというほど送られて来るが、東京であゆをうまく食おうとするのは土台無理な話で、かれこれいうのがおかしい

文字遣い

新字新仮名

初出

「星岡」1935(昭和10)年

底本

  • 魯山人の美食手帖
  • グルメ文庫、角川春樹事務所
  • 2008(平成20)年4月18日