じせいとどうとくかんねん だいぞくしょうぞく・めいよのあくとう
時勢と道徳観念 大賊小賊・名誉の悪党

冒頭文

虎関の作と云い、玄慧の作とも言われる異制庭訓往来に、 賊に大小あり、小罪既に大罪よりも軽し。小賊何ぞ大賊に等しからんや。窃盗・強盗は山賊・海賊の比にあらず。山賊・海賊は他領押両(領)の大賊党に比せず。又位を諍ひ国を奪ふの大盗よりも軽し。然らば末代は皆賊世なり。たゞ我一人のみにあらざるなり。夫れ殷湯の夏を奪ひ、周武の紂を伐つ、何ぞ尭舜揖譲の政に同じからん。全く聖主賢君の風にあらず。

文字遣い

新字新仮名

初出

「民族と歴史 第二巻第四号」1919(大正8)年10月号

底本

  • 先住民と差別 喜田貞吉歴史民俗学傑作選
  • 河出書房新社
  • 2008(平成20)年1月30日