「ケット」と「マット」
「ケット」と「マット」

冒頭文

一 緒言 僻陬(へきすう)の地に先住民族がながく取り遺されるという事は、今さら事新しく言うまでもないところで、現に台湾東部の山地には、近くその実際を見るのである。これを我が古史に徴するに、西南薩隅の地に夷人と呼ばれた隼人が奈良朝頃までもなお残存し、東北奥羽の地方には平安朝に至ってなお蝦夷が猖獗を極めたところのもの、いずれもかつては広く分布していたこれらの先住民族が、中央に近いところから漸

文字遣い

新字新仮名

初出

「歴史地理 第五八巻第五号」1931(昭和6)年11月号

底本

  • 先住民と差別 喜田貞吉歴史民俗学傑作選
  • 河出書房新社
  • 2008(平成20)年1月30日