えふでにかきのこすほろびゆくうつくしさ
絵筆に描き残す亡びゆく美しさ

冒頭文

京の舞妓の面影は、他のものの変り方を思えば、さして著しくはありませんが、それでもやはり時代の波は伝統の世界にもひたひたと打ち寄せているようです。髪の結方とか、かんざしとか、服装の模様とかが、以前に比べると大分変って来ています。髪なんか、昔の純京風は後のつとを大きく出して、かたい油つけをつけたものですが、近ごろは、つとも小さくなり油つけもつけないでさばさばした感じのものになってしまいました。

文字遣い

新字新仮名

初出

「大阪朝日新聞」1934(昭和9)年8月29日

底本

  • 青帛の仙女
  • 同朋舎出版
  • 1996(平成8)年4月5日