げいじゅつざんまいすなわちしんこう いきることにもだえたよんじゅうだい
芸術三昧即信仰 生きることに悶えた四十代

冒頭文

人は苦しまなければいけない、苦しんでこそ初めて生まれるものが有る。わたしはひと頃異常に生きていることに疑問を感じたことがあった。何のために生きているのだろう。画を描くことによって画名を揚げてさて何になるのだろう。むしろ死んだ方がいいのじゃないかと悶えたことがあった。四十歳前後のことで、考えてみればはや二十年ばかりも前のことである。 そんな時分にはよくわたしは貧民街を歩いたりした。そして画

文字遣い

新字新仮名

初出

「京都日日新聞」1936(昭和11)年3月30日夕刊

底本

  • 青帛の仙女
  • 同朋舎出版
  • 1996(平成8)年4月5日