つちださんのげいじゅつ つちだばくせんついとう
土田さんの芸術 土田麦僊追悼

冒頭文

昨年の夏だったか、京都の関係者が寄り合って友禅祭を催し、その所蔵品を持ち寄って一堂に陳列した事があった。私も見物に行ったが、流石に仙禅斎の代表作などたんと集っていて、なかなか美事な催しだった。いい図柄や色気のものがたんとあって、つい懐ろの写生帖を取り出しては、心覚えに縮図させられる気にさえなった程だった。 だんだん見物して行くと、あちらに誰か男の人が頻りに写生している。おや、誰ぞ写生した

文字遣い

新字新仮名

初出

「塔影」1936(昭和11)年7月号

底本

  • 青帛の仙女
  • 同朋舎出版
  • 1996(平成8)年4月5日