ふようのはなにもにたうつくしいようきひを
芙蓉の花にも似た美しい楊貴妃を

冒頭文

帝展の方も大分出品しなかったので今年は思い立って……それも近頃取りかかったばかりで明日辺りから墨を当てようかというところなのです。画題は〈楊貴妃〉それもあの湯上りの美しい肌を柔らかな羅(うすもの)に包んで勾欄(てすり)に凭れながら夢殿の花園を望んで見ると言った構図で、尤も湯上りと言いますと何だか意気に、そうしてやや下品な様に聞こえますがそうではなく極気品の高いものにして全体羅の中に玉の様な肩先から

文字遣い

新字新仮名

初出

「京都日出新聞」1923(大正12)年9月9日

底本

  • 青帛の仙女
  • 同朋舎出版
  • 1996(平成8)年4月5日