ふるいきおくをたどって やまもとしゅんきょついとう
古い記憶を辿って 山元春挙追悼

冒頭文

その頃の絵は今日のように濃彩のものがなくて、いずれもうすいものでした。ちょうど春挙さんの海浜に童子のいる絵の出た頃です。そのころは、それで普通のようにおもっていたのでした。今日のは、何だか、そのころからみるとずっと絵がごつくなっているとおもいます。 〈法塵一掃〉は墨絵で、坊さんの顔などは、うすい代赭(たいしゃ)で描かれていました。尤も顔の仕上げばかりではなしに、一体にうすい絵でした。この作品

文字遣い

新字新仮名

初出

「都市と芸術」1934(昭和9)年4月号

底本

  • 青帛の仙女
  • 同朋舎出版
  • 1996(平成8)年4月5日