としょかんほうをちほうのばんにんのてに
図書館法を地方の万人の手に

冒頭文

三年前のことであった。 戦い敗れ、青年の魂の表皮には、まだ生ま生ましい傷痕が赤い肌をあらわにしているときであった。 広島県の田島の青年が、突然、私の家にやって来た。リュックサックから、数十冊の本をものもいわずに引き出して、 「先生、今、大阪から、こんな良い本を、これだけ買ってきました」 昂然と、私に一つ一つの本を示しつつ、その表紙を、撫ぜんばかりに示すのであった。

文字遣い

新字新仮名

初出

「出版ニュース」1950(昭和25)年5月上旬号

底本

  • 中井正一全集 第四巻 文化と集団の論理
  • 美術出版社
  • 1981(昭和56)年5月25日