ちくおんきのはり
蓄音器の針

冒頭文

何の針をとって見てもヴィクターのソフトはヴィクターのソフトだ。針は現にひとつひとつ違っているんだがやはりヴィクターのソフトだ。どのひとつひとつもが一つの「型」にしかすぎない。 「型」の出現は一応販売あるいは組織から要求されてきたことである。 今人間もようやく政策あるいは就職の形式をもって、道具化商品化しつつある。すなわち「型」可能形の中にはめられつつある。 これまでの哲学では

文字遣い

新字新仮名

初出

「京都日出新聞」1933(昭和8)年6月5日

底本

  • 中井正一全集 第四巻 文化と集団の論理
  • 美術出版社
  • 1981(昭和56)年5月25日