ろはんのしゅっせばなし
露伴の出世咄

冒頭文

ある時、その頃金港堂の『都の花』の主筆をしていた山田美妙に会うと、開口一番「エライ人が出ましたよ!」と破顔した。 ドウいう人かと訊(き)くと、それより数日前、突然依田学海(よだがっかい)翁を尋ねて来た書生があって、小説を作ったから序文を書いてくれといった。学海翁は硬軟兼備のその頃での大宗師であったから、門に伺候して著書の序文を請(こ)うものが引きも切らず、一々応接する遑(いとま)あらざる

文字遣い

新字新仮名

初出

「改造社文学月報 11号」1927(昭和2)年11月5日

底本

  • 新編 思い出す人々
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1994(平成6)年2月16日