よんじゅうねんまえ ――しんぶんがくのしょこう――
四十年前 ――新文学の曙光――

冒頭文

亜米利加(アメリカ)の排日案通過が反動団体のヤッキ運動となって、その傍杖(そばづえ)が帝国ホテルのダンス場の剣舞隊闖入となった。ダンスに夢中になってる善男善女が刃引(はびき)の鈍刀(なまくら)に脅(おど)かされて、ホテルのダンス場は一時暫らく閉鎖された。今では余熱(ほとぼり)が冷めてホテルのダンス場も何カ月(つき)ぶりかで再び開かれたが、さしもに流行したダンス熱は一時ほどでなくなった。一時は猫も杓

文字遣い

新字新仮名

初出

「きのふけふ」博文館、1916(大正5)年3月

底本

  • 新編 思い出す人々
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1994(平成6)年2月16日