めいじぶんがくのかいたくしゃ ――つぼうちしょうよう――
明治の文学の開拓者 ――坪内逍遥――

冒頭文

坪内君の功労は誰でも知ってる。何も特にいわんでも解ってる。明治の文学の最も偉大なる開拓者だといえばそれで済む。福地桜痴(ふくちおうち)、末松謙澄(すえまつけんちょう)などという人も創業時代の開拓者であるが、これらは鍬を入れてホジクリ返しただけで、真に力作して人跡未踏の処女地を立派な沃野長田たらしめたのは坪内君である。 有体(ありてい)にいうと、坪内君の最初の作『書生気質』は傑作でも何でも

文字遣い

新字新仮名

初出

「新潮」1912(明治45)年1月

底本

  • 新編 思い出す人々
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1994(平成6)年2月16日