あわしまちんがく ――かときのぶんかがさんしゅつしたがかいのハイブリッド――
淡島椿岳 ――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――

冒頭文

震火で灰となった記念物の中に史蹟というのは仰山だが、焼けてしまって惜(おし)まれる小さな遺跡や建物がある。淡島寒月(あわしまかんげつ)の向島(むこうじま)の旧庵の如きその一つである。今ではその跡にバラック住いをして旧廬(きゅうろ)の再興を志ざしているが、再興されても先代の椿岳(ちんがく)の手沢(しゅたく)の存する梵雲庵(ぼんうんあん)が復活するのではない。 向島の言問(こととい)の手前を

文字遣い

新字新仮名

初出

「きのふけふ」博文館、1916(大正5)年3月

底本

  • 新編 思い出す人々
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1994(平成6)年2月16日