ふたばていよだん
二葉亭余談

冒頭文

一 二葉亭との初対面 私が初めて二葉亭と面会したのは明治二十二年の秋の末であった。この憶出(おもいで)を語る前に順序として私自身の事を少しくいわねばならない。 これより先き二葉亭の噂(うわさ)は巌本撫象(いわもとぶしょう)から度々聞いていた。巌本は頻(しき)りに二葉亭の人物を讃歎して、「二葉亭は哲学者である、シカモ輪廓の大なる人物である、」と激称していた。『浮雲』は私の当時の愛

文字遣い

新字新仮名

初出

「きのふけふ」1916(大正5)年3月5日

底本

  • 新編 思い出す人々
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1994(平成6)年2月16日