なかむらちへいちょ「ながみみこくひょうりゅうき」
中村地平著「長耳国漂流記」

冒頭文

こゝに、歴史的事実といふものがあつて、作家が、製作欲をそゝられる場合、然しながら、如何に書くべきか、といふことは、かやうな意欲と同時に忽ち構想されるほど容易なものでは決してない。 歴史小説といへば、歴史よりも小説であるのが当然で、読者は必ずしも資料に忠実であることを要求しないのが普通であり、物語の内容も亦、事実よりも、創作的自由、或ひは思想によつて、変通自在であることが、決して不合理では

文字遣い

新字旧仮名

初出

「現代文学 第四巻第七号」大観堂、1941(昭和16)年8月28日

底本

  • 坂口安吾全集 03
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年3月20日