ままのてこな
真間の手古奈

冒頭文

一 一人の年老いた人相見が、三河の国の碧海郡の、八ツ橋のあたりに立っている古風な家を訪れました。 それは初夏のことでありまして、河の両岸には名に高い、燕子花(かきつばた)の花が咲いていました。 茶など戴こうとこのように思って、人相見はその家を訪れたのでした。 縁につつましく腰をおろして、その左衛門という人相見は、戴いた茶をゆるやかに飲んで、そうして割籠のご飯を食

文字遣い

新字新仮名

初出

「サンデー毎日」1929(昭和4)年1月1日

底本

  • 国枝史郎伝奇短篇小説集成 第二巻 昭和三年~昭和十二年
  • 作品社
  • 2006(平成18)年12月15日