レモンのはなのさくおかへ
レモンの花の咲く丘へ

冒頭文

この Exotic の一巻を 三郎兄上に献ず、 兄上は小弟を愛し小弟 を是認し小弟を保護し たまう一人の人なり。 序に代うるの詩二編 孤独の楽調 三味線の音が秋の都会を流れて行く。 霧と瓦斯(ガス)との青白き光が Mitily の邦(くに)の悲哀を思わせる 宵。…………………… 唄うを聞けや。 艶(つや)もなき中年の女の歌、 節(ふし)は秋の夜の時雨よりも

文字遣い

新字新仮名

初出

「レモンの花の咲く丘へ」東京堂書店、1910(明治43)年10月

底本

  • 伝奇ノ匣1 国枝史郎ベスト・セレクション
  • 学研M文庫、学習研究社
  • 2001(平成13)年11月16日