ほたる

冒頭文

この図を描くに至つた動機と云ふやうな事もありませんが曾(かつ)て妾(わたくし)は一茶(いつさ)の句であつたか蕪村(ぶそん)の句であつたか、それはよく覚えませんが、蚊帳(かや)の句を読んで面白いと思つて居りました。併しそれを別に画にして見たいと云ふ程の考へもなく過ぎました。 夏の頃フト蚊帳の記憶を喚(よ)び起して、蚊帳に螢を配したならば面白かろうと思ひ付いたのが此画を製作するに至りました径

文字遣い

新字旧仮名

初出

「帝国絵画宝典」1918(大正7)年7月

底本

  • 青眉抄その後
  • 求龍堂
  • 1986(昭和61)年1月15日