よせのゆうだち
寄席の夕立

冒頭文

寄席なんかに出入りするのは、あまりよい趣味ではない。這入るにも、後先を見すまして、つつと入りこんでしまふ。さう言ふ卑屈な心持ちを恥ぢながら、つい吸はれるやうに、席亭の客になつて行く。こんな風だから、いつだつて大手ふつて、這入つた覚えがない。親たちがこんな風のしつけをしたからなのである。生薬屋であつた私の家の店先へ、いつからか来て、来れば一時間では腰をあげる気づかひのない若い山陽道辺の女、亭主と言ふ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「苦楽 第四巻第十号臨時増刊」1949(昭和24)年8月

底本

  • 折口信夫全集 22
  • 中央公論社
  • 1996(平成8)年12月10日