じつかわえんじゃくさん
実川延若讃

冒頭文

「女殺(ヲンナコロシ)油女殺(ノ)地獄」の芝居を、見て戻つた私である。一日、極度に照明を仄かにした小屋の中にゐて、目も心も、疲れきつてしまつた。思ひの外に、役者たちの努力が、何となく感謝してもよい心持ちを、持たしてくれたけれども、何分にも、先入主となつたものが、度を超えて優秀な技芸であつた為、以前見たその美しい幻影が、今見る役者たちの技術の上に、圧しかゝるやうな気がして、見てゐてひたすら、はかなく

文字遣い

新字旧仮名

初出

第一部分「苦楽 第四巻第五号」1949(昭和24)年5月<br>第二部分「演劇界 第七巻第四号」1949(昭和24)年4月<br>第三部分「かぶき讃」創元社、1953(昭和28)年2月20日

底本

  • 折口信夫全集 22
  • 中央公論社
  • 1996(平成8)年12月10日