ぶんらくのこうみょう
文楽の光明

冒頭文

今の時期の日本人に、一番見せたく思はれるのは、文楽座の舞台が、最濃厚に持つてゐる愁ひの芸術である。極度に反省力を失つた我々は、心の底から寂しい光りに照されて来なければ、ほんたうに種族としての救ひがないのである。文楽も、ある点からは近年少しうけに——と言つては気の毒なほどだが——入り過ぎた傾きが見えた。だが今度と言ふ今度はさう言ふものを洗ひ落した、静かな輝きを以て、我々の心に触れようとしてゐる。東京

文字遣い

新字旧仮名

初出

「東京新聞」1949(昭和24)年5月3日

底本

  • 折口信夫全集 22
  • 中央公論社
  • 1996(平成8)年12月10日