なつしばい
夏芝居

冒頭文

真夏の天地は、昼も夜も、まことに澄みきつた寂しさである。日の光りの照り極まつた真昼の街衢に、電信柱のおとす影。どうかすると、月の夜を思はせる静けさの極みである。夜は又夜で、白昼の如く澄みきつた道の上のわづかな陰が、道をしへでも飛び立ちさうな錯覚を誘ふ気を起させる。世の中が昔のまゝだつたら、都会も田舎も今はかう言ふしみ〴〵した寂しさの感じられる夏の最中である。かう言ふ季節の、身に沁みた印象が、はなや

文字遣い

新字旧仮名

初出

「苦楽 別冊」1948(昭和23)年7月

底本

  • 折口信夫全集 22
  • 中央公論社
  • 1996(平成8)年12月10日