てならいかがみけんぶつき
手習鑑見物記

冒頭文

歌舞妓の春を謳歌するには、稍物寂しいが、其でも尚最後の花盛りに見呆けて愉しむことの出来る「手習鑑」昼夜通しの興行である。無理算段して百花繚乱たる様を見せようとするのは、見物の心を知らぬ興行者の老婆心である。尚二三度、菊五郎自身が洗ひあげる必要のある「平家の曲」はまだしも、夜の「蛇柳」は全く驚される。歌舞妓の癲癇患者も、之を見たら恐らく其心酔から解脱して、忽に撲滅論者に豹変しさうな実に何とも言へぬも

文字遣い

新字旧仮名

初出

「時事新報」1947(昭和22)年5月15日

底本

  • 折口信夫全集 22
  • 中央公論社
  • 1996(平成8)年12月10日