つじのたちばなし
辻の立ち咄

冒頭文

夏めいて来ると、祭りに狂奔した故郷の昔が、思ひ出される。其と一続きに、きつと浮んで来るのは、浄瑠璃から出た「夏祭浪花鑑」といふ芝居である。あんな戯曲の上にも、大阪と東京との違うた、昔の姿が見えて居る。人物の性根が、語り物と舞台とでは、よつぽど違ふ。役者の上方出と、関東生れとで、理会が変つて居る。一寸徳兵衛は、乞食をした男である。其が一般に、すつきりしたたて衆らしい演出をするのは、江戸役者の侠客観が

文字遣い

新字旧仮名

初出

「橄欖 第四巻第八号」1925(大正14)年8月

底本

  • 折口信夫全集 22
  • 中央公論社
  • 1996(平成8)年12月10日