げいのゆういてんぺんそう
芸の有為転変相

冒頭文

「……花を惜しめど花よりも惜しむ子を棄て武士を捨て、住みどころさへ定めなき有為転変の世の中や……。」幼年時代から何十遍見聞きした熊谷陣屋幕切れの渡りぜりふである。竟に一度何の感傷も覚えなかつた文句である。其が今度といふ今度、真に思ひがけなく不意討ちのやうに鼻の心を辛くさせられた。世間も個人も皆痛切に、此段切れの文句に身をつまされる有為転変を、実感してゐるのである。歌舞妓芝居自身すら、転変を深く思ふ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「東京新聞」1946(昭和21)年10月19日

底本

  • 折口信夫全集 22
  • 中央公論社
  • 1996(平成8)年12月10日