がいくのせんししゃ ――なかむらかいしゃをるいす――
街衢の戦死者 ――中村魁車を誄す――

冒頭文

戦災死と言ふ語は、侘しい語である。積る思ひを遂げることなく過ぎ行く、といふ義が伴ふとすれば、此ほどやる瀬ないことはない。だが、国難に殉じたと言ふ、一部聯想の悲痛なものがあつて、その側からは、我が傷ましい街衢(ガイク)の戦死者を、纔かに弔ふに足る思ひがある。中村魁車(かいしや)を憶ふ場合、殊にこの語があつて、吾々の傷む心が、幾分でも軽くなるのはせめてもの気がする。大阪に第一次戦災のある日までは、夢に

文字遣い

新字旧仮名

初出

「日本演劇 第三巻第七号」1945(昭和20)年11月

底本

  • 折口信夫全集 22
  • 中央公論社
  • 1996(平成8)年12月10日